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肥満と生きる私の人生で見つけた、心から楽しめること、新たな目標

「減量には、自分にできそうな、心から楽しめる運動を選び、それを趣味にしてしまうのが一番です。私の場合はそれがインドアサイクリングでした。私は今、自転車に乗らないと調子が悪くなるくらいで、自転車なしの生活は考えられません。ようやく人生が上向いてきた、と感じています。」- S・Yさん

どんどん太り、仕事用のスーツを毎年新調する

私は、物心ついた時から体が大きく、肥満体型でした。幼稚園の頃から一番大きかったです。祖母や父、弟の体型もそうでしたから、遺伝なのだと思いますが、夕食は店屋物が多かったことや、自宅の裏に駄菓子屋があってお菓子ばかり食べていたことも影響しているかもしれません。

体重は、小学生の時に約60キロ、中学生の時に約80キロありましたが、当時はそれほど気にしていませんでした。むしろ体が大きいことで先生によく覚えてもらえましたし、体育の授業で、校庭を走る周数を先生から他の生徒より大目に見てもらうことがあると「ラッキー!」とすら感じていました。その後の学生時代も太っていてもそれほど困ることはありませんでした。

初めて困ったのは、就職した会社に白シャツとスーツ着用で出社しなければいけなかったことです。その頃には体重は100キロ以上あり、どんどん太っていったので、毎年スーツを新調するはめになり、かなりの出費でした。当時はりんごダイエットなど、さまざまなダイエットを試しましたが、失敗しました。

また、公共交通機関の座席にも苦労しました。特に、海外旅行で飛行機に乗るのは移動時間が長いので辛かったですね。まず、飛行機の安全ベルトが届かないので延長ベルトを借ります。隣の人と必ず体がくっついてしまうので申し訳なく思いました。3列席の真ん中に座るのが最も辛かったです。なるべく通路側の席に座り、通路にはみ出るようにして座っていました。そして前の人がシートを倒すと、より狭くなり、テーブルが私の体に当たって斜めになって使えなくなるので困りました。

「物心ついた頃から体が大きく、肥満体型でした。祖母や父、弟の体型もそうでしたから、遺伝なのだと思います。」

-S・Yさん

寝ている間は水泳をしているかのよう

自分の体と向き合わざるを得なくなったのは、就職後しばらくした頃のこと。日中に眠気が強く立ったまま寝てしまうことがあり、一泊入院して検査を受けたら、肥満に睡眠時無呼吸症候群を合併し、肥満症1と診断されたのです。「寝ている間は水泳をしているかのように、ほとんど息が止まっている」と聞いて驚きました。

その治療で、鼻に装着したマスクから送り込む空気圧で空気の通り道を確保するCPAP療法 (シーパップ。持続陽圧呼吸療法) をしましたが、鼻が痛くて仕方なかったので、それを外したくて「もう痩せるしかない」と思いました。

減量を試みましたが、なかなか痩せませんでした。この頃は仕事の激務もあって体調が悪かったです。

「肥満に睡眠時無呼吸症候群を合併し、肥満症と診断されたのです。『寝ている間は水泳をしているかのように、ほとんど息が止まっている』と聞いて驚きました。」

-S・Yさん

1 BMI 25以上で内臓脂肪蓄積がある、または肥満に関連する健康障害がある場合、医学的に減量が必要な「肥満症」と診断されます。(出典:日本肥満学会編:肥満症診療ガイドライン2016, ライフサイエンス出版, 2016, p.xii)

減量とリバウンドを繰り返す苦しい日々

減量経験は10年以上になります。1カ月水泳に通い10キロ痩せたこともありましたが、すぐに戻ってしまいました。スポーツクラブの入会と退会を3回ほど繰り返しました。ある時、私が乗っていたマシンから焦げ臭いにおいがして、スタッフの方から「体重が3桁を切るまで使わないでいただけますか」と言われました。その頃は、体重が110キロありました。

肥満症の治療を続けているのに体重はどんどん増え、糖尿病になってしまいました。医師から「このままだと死んでしまいますよ。」とまで言われ、2014年に減量・代謝改善手術を受けました。この頃が私の最高体重で、140キロ以上ありました。

術後、内臓脂肪がだんだん減り、2016年に102キロになりましたが、苦しい思いもしました。減量・代謝改善手術を受けた人に多い症状だそうですが、胆石ができたのです。それが詰まって倒れそうになったので、胆嚢(のう)を摘出する手術も受けました。

 

楽しみながら、本気のダイエットを開始

その後もお菓子を食べ続けてしまい、120キロまでリバウンドしてしまいました。そして、糖尿病が悪化したのです。2020年1月、医師から再び「このままだと死んでしまいます」と忠告されました。

2回もそう言われて反省しました。せっかく減量・代謝改善手術を受けて痩せたのだから、「本気でダイエットをしよう!」と思いました。減量のためサイクリングを始めたのです。

きっかけは、スマホでできる位置情報ゲームアプリにハマったこと。位置情報を使って、あるスポットまで実際に行くとキャラクターを捕まえることができるゲームで、自宅から50キロ離れたところまで毎週末に電動自転車で出かけるようになりました。いつの間にか自転車にハマって、ロードバイクを購入し、外を走るようになりました。

さらに、自宅にバーチャルサイクリングアプリの専用キットを一式揃えました。仮想空間で景色を見ながら、世界中のライダーと一緒に走ることができます。一人だと飽きてしまいますが、オンラインには必ず誰かがいて競い合えるのが魅力です。自分と同等の実力の人と走るのがおもしろく、追い抜く楽しさもあります。天気は関係なくやりたい時にできるところや、持ち物などの煩わしい準備が不要な点も気に入っています。

「これまでの減量の失敗は面白い経験になっています。失敗したら他のものを試せば良いのです。落ち込む必要はありません。」

-S・Yさん

ゆっくり長く走るのではなく、私の場合は仕事後、毎日1時間ほど全力で走るスタイルで、約500キロカロリーを消費します。約2年半で計1万 2,000キロを走りました。平日は室内で、週末は近隣のサイクリングロードなど外で汗をかき、たまに電車に折りたたみ式自転車を乗せて遠征して楽しんでいます。

毎日自転車に乗っているので他に筋トレはしていません。今は一食の量は一般的な一人前よりもやや少ないくらいです。自転車で汗をかいた後のアイスクリームがおいしいですね。

現在の体重は、最高体重から50キロ以上痩せて、88キロ。これを80キロにするのが目標です。病院で計測したら、1年間で脂肪が15キロ減って、筋肉量が3キロ増えていました。血糖値も正常値に戻っています。

これまでの減量の失敗は面白い経験になっています。失敗したら他のものを試せば良いのです。落ち込む必要はありません。

コンピュータ関連の仕事をしているため普段はリモートワークで、年に一度ほど出社するのですが、先日出社した際、同僚に「痩せたから、誰か分からなかった」と言われました。それを聞いて「けっこう頑張ったな」と感じましたね。

仲間ができた喜びや大会出場という目標も

「減量には、自分にできそうな、心から楽しめる運動を選び、それを趣味にしてしまうのが一番です。私の場合はそれがインドアサイクリングでした。天気に左右されずやりたいと思った時にすぐやれる運動で、スポーツクラブに通うのと違い『雨だから行きたくないな』などとサボる理由がなくなるからです。」

-S・Yさん

減量には、自分にできそうな、心から楽しめる運動を選び、それを趣味にしてしまうのが一番です。自宅で体を動かせるゲームなどもいいと思います。私の場合はそれがインドアサイクリングでした。天気に左右されずやりたいと思った時にすぐやれる運動で、スポーツクラブに通うのと違い「雨だから行きたくないな」などとサボる理由がなくなるからです。

個人的には、自転車をおすすめしたいです。経験がないのにいきなりマラソンなどを始めると膝を壊しやすいのですが、自転車なら膝に負担がかかりません。パワーメーターがついていれば、自分にどれくらい力がついたか、数字で体の変化も分かります。

私は今、自転車に乗らないと調子が悪くなるくらいで、自転車なしの生活は考えられません。ようやく人生が上向いてきた、と感じています。

「2022年秋、約110キロを走る『ツール・ド・ちば』に参加する予定です。オンラインの仲間たちに会えるのが楽しみです。2023年には日本最高峰の公道サイクルイベント『Mt.富士ヒルクライム』に出場するのが目標です。」

-S・Yさん

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