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がんばりきれない弱さを認めながら、これからも自分の体と向き合っていきたい

「思うように体重が減らず厳しい時期もありましたが、それでも月1回の通院を続けられたのは、主治医を信頼できたことが大きかったと思います」「うまくいかなくても落ち込んだり思い詰めたりすることなく、『また来月がんばればいいや』と、ある意味開き直れたことも良かったのではないかと感じています」—M・Sさん

医師の厳しい言葉をきっかけに肥満症の治療を開始

小学生の時は水泳、中学・高校はサッカーと子どもの頃からスポーツを続けていて、体は大きいほうでしたが太ってはいませんでした。大学時代もスイミングスクールでアルバイトをするなど、体は動かしていたほうだと思います。体重が増え始めたのは結婚してからです。社会人になって運動量が減っていたところに、妻が用意してくれる食事を3食しっかり食べるようになり、さらに禁煙してからどんどん太っていきました。結婚当初80キロほどだった体重は100キロ台になっていましたが、体調は良好で日常生活に支障もなく、体重が増えたことはあまり気にしていませんでした。

肥満症の治療を始めるきっかけになったのは、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)ができたことでした。足のふくらはぎ辺りにこぶのようなものができたので近所の皮膚科クリニックを受診したところ、「一度、外科で診てもらったほうがいいと思いますよ」と言われ、心臓血管外科を紹介されました。さらに心臓血管外科の先生から肥満外科の受診をおすすめされて受診することになったのです。その時は「先生がそう言うなら、一度行っておこうか」という軽い気持ちだったのですが、いざ外来を受診すると、担当の外科の医師から体重について厳しい言葉を告げられました。

この時点で体重は127キロまで増えていましたが、ひざや腰が痛むこともなく元気だったため、減量を考えたことはありませんでした。それでも医師から、今の自分の体型は医学的に減量が必要な状態であること、標準体重の人なら何かあって倒れても手術できるが、自分の体重では手術もできないこと、そうなる前に減量しなければ命にかかわる可能性もあることなどを説明され、自分の体の状態を初めて自覚することができたのです。妻はショックを受けたようでしたが、私自身はショックはなく、「やせなければいけないんだな」と、素直に受け止めていました。

この時、治療法の一つとして減量・代謝改善手術も提案されましたが、手術には抵抗があったので食事・運動療法を選択しました。

食事の見直しと毎日のウォーキング、月1回の通院を継続

2018年から肥満外科外来に月1回通院し、食事内容を見直して会社帰りに駅まで30分ほど歩くなど、食事・運動療法に取り組みました。受診時には血液検査と体組成測定のほか、管理栄養士さんによる栄養指導を受けましたが、最初のうちはダメ出しばかり。自分一人ではなかなかうまくいきませんでしたが、妻に栄養指導に同席してもらい始めて改善されていったように思います。例えばとんかつは油で揚げずにレンジで加熱するなど、栄養指導で教えてもらった調理法を取り入れてくれて、食事・運動療法を始めて半年後には6キロほど減量できました。とはいえ、適正体重を30キロ以上オーバーしている状態は続いていました。通院を始めて1年ほど経った頃に、肥満症に対する内科的治療の専門外来を受診してみてはどうかと勧められ、これまでの肥満外科外来に加え、肥満代謝内科外来でも診てもらうことになりました。

肥満代謝内科外来には月1回通院し、食事・運動療法を続けました。主治医はとても研究熱心で、ご自分で食べてみた結果をもとに「これを食べるならこちらを選んだほうがいい」とアドバイスしてくださるので、とても納得感がありました。ためになる話も多く、私が「清涼飲料水はゼロカロリーのものを選んでいます」と言うと、「ゼロカロリー」「無糖」と表記されていても、実際にはエネルギーや糖質が含まれているものもあること1)、また砂糖にもさまざまな種類があるので、そのような表記に惑わされず、購入前に原材料名や栄養成分表を確認したほうが良いと教えてもらいました。それ以来、清涼飲料水はパッケージの表示をチェックしてから買うようになったのですが、それもだんだん面倒になって、今は清涼飲料水ではなくお茶を選んでいます。

診察以外にも、患者向けの講演会や患者同士の交流会、体操教室などさまざまなイベントに参加できたことも良かったです。他の患者さんの体験談や、食事・運動療法の工夫などを知ることができて参考になりましたし、励みにもなりました。

主治医や家族のサポートで治療を継続。 薬による治療を始め、新たなステージへ

妻の協力で食事の質も改善されてきた頃、主治医から肥満症治療薬の使用を提案されました。不安もありましたが、もともと新しいものが好きな性格ですぐに使用を決めました。主治医からは「薬は長く使うものではないので、薬を止めた後にリバウンドしないためにどうすればいいのか、一緒に考えていきましょう」と言われています。食事・運動療法も続けながら、食べ過ぎず少量でも満足できる体づくりに取り組んでいきたいと思っています。現在は肥満代謝内科外来は2週間に1回、肥満外科外来は2ヵ月に1回のペースで通院を続けています。

思うように体重が減らず厳しい時期もありましたが、それでも定期的に通院を続けられたのは、主治医を信頼できたことが大きかったと思います。一律に「これはダメ」「我慢しなさい」という指導ではなく、今の自分の状況に合ったアドバイスをしてくれましたし、私の話もしっかり聞いてくださるなどコミュニケーションも取りやすかったです。もしも主治医との相性が良くないと感じていたら、治療の継続は難しかったかもしれません。また、うまくいかなくても落ち込んだり思い詰めたりすることなく、「また来月がんばればいいや」とある意味開き直れたことも良かったのではないかと感じています。肥満症に悩んでいる方や治療をためらっている方には、勇気を出して一歩踏み出してほしいと思います。
 

*肥満症の治療の効果には個人差があります。全ての方が同様の結果を示すものではありません。また、治療の選択肢は患者さんの状態によって異なりますので、医師と相談して決定してください。

参照資料
  1. 食品表示法の食品表示基準により、食品100gあたりのエネルギーが5kcal未満(飲料の場合は100mlあたり5kcal未満)であれば、「ゼロカロリー」「ノンカロリー」と表示できることになっています。(出典:消費者庁:食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン 第4版, 2022)​

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